【解説】新型コロナウイルスについて

コロナウイルスの特徴を正しく理解しよう!

新型コロナウイルスは肺炎を起こす

コロナウイルスはいわゆる「風邪」を引き起こすとてもありふれたウイルスです。

ライノウイルスなど他にも風邪を起こす菌はたくさんいます。

しかし、基本的に自然に軽快することと、簡単な診断方法がないということから風邪を引いたときに原因のウイルスを確定させることはほとんどありません。

ウイルスは細菌感染に比べ様々な症状が出ますが、このコロナウイルスは特に肺にダメージを与えます。

肺炎とは文字通り肺に炎症が起きた状態です。

肺炎にもいろいろあって細菌が原因の細菌性肺炎、ウイルスが原因のウイルス性肺炎、免疫の異常や薬が原因になる間質性肺炎などいろいろ呼び名が変わります。

風邪は一般的に専門的には上気道炎と呼ばれます。これは上気道(鼻、咽頭、喉頭)の炎症です。一方気管支や肺など上気道より奥の部分を下気道(気管支、肺)と言います。

肺炎は下気道炎であると言えます。

肺炎と診断するには画像所見が重要です。レントゲンで肺は空気が多いため黒く写りますが、肺炎など炎症があり、そこに空気が入る部分に水分が貯まるとX線の通りが悪くなり白く見えます。


www.dr-maehashi.jpから画像をお借りしました。

CTでも同様で肺炎の場所は水分を多く含む場所が白く写ります。

のどの痛みはない(上気道炎の症状がない)けれどレントゲンやCTで明らかな肺炎像が無い場合は気管支炎などと言われたりします。

新型コロナウイルス、どういう症状が出るのか - BBCニュース
早い段階で治療を受けた感染者99人に関する詳細分析が、1月30日付で英医学誌「ランセット」に掲載された。

こちらの記事によると

新型コロナウイルスに感染し、病院に搬送された99人の内全員に肺炎の画像所見を認めており、またの他の症状は以下の通りであったとのことです。

発熱:82人
咳:81人
息切れ:31人
筋肉痛:11人
混迷:9人
頭痛:8人
のどの痛み:5人
発熱は感染症であればほとんど出ますね。しかし注目すべきは肺炎でも熱が出ていない人がいるということです。この理由としては解熱剤を飲んでいたり、たまたま測定した時には発熱が無かったことなどが考えられます。
一般的に感染症にかかると24時間発熱が続くことは稀です。
良くあるパターンとしては夕方寒気がしてきてその後発熱し、汗をかいて朝には下がり、また夕方寒気がして発熱するといった1日1回夕に発熱するパターンです。
なので一晩寝て明け方体温が下がっていてもその晩にまた発熱することは良くあります。
熱が一回下がったからといって治っていることにはならないので注意しましょう。
また寒気(毛布をかぶっていれば大丈夫)、悪寒(電気毛布に暖房をガンガンにかけても寒い)は熱が上がるサインです。
筋肉痛、頭痛は熱があったりすれば感じる人が多いです。他には全身のだるさや関節痛なんかも感染症に良くある症状です。これらの症状は臓器非特異的(簡単に言うと肺炎でも上気道炎でも起こり得る)な症状です。
咳、息切れ、のどの痛みは筋肉痛や頭痛と対照的に臓器特異的(やられてる臓器により起こる)な症状です。上気道炎ならのどの痛み、肺炎なら咳や息切れが起こるのです。もちろん上気道にも下気道(肺)にも感染していれば両方起きます。
肺炎で胸が痛むことがあります。これは厳密には胸膜炎という状態になっています。
肺は痛みを感じませんが、肺の周りの膜である胸膜は痛みを感じます。
肺炎の炎症が胸膜まで波及すると胸の痛みなどの症状が出ることがあります。膜の痛みなので深呼吸して膜が伸び縮みしたり、体をひねったりすると痛むことがあります。
胸膜炎になっても治療は変わりません。
混迷とは意識レベルの低下を意味します。意識レベルとは意識がどれだけはっきりしているかということで、発熱などで頭がぼーっとすると人の話を理解できなくなったり、自分がどういう状態でどこにいるのかわからなくなったりします。発熱(高熱)でも混迷は起きますが、肺炎が強くて酸素が不足したり、脳に炎症が起きても混迷は起きえます。
先ほど紹介した症状はどれも一般的な肺炎の症状です。ウイルスによる肺炎は基本的に自己で治癒するしかありません。その間に脱水にならないように点滴したり、食事が採れるように解熱剤を使ったり、肺へのダメージが回復するのを待つために酸素投与などをしてしのぎます。
新型コロナウイルス肺炎で亡くなっている方の多くは
・肺が元々弱っている人(ヘビースモーカー、肺に持病があるなど)
・高齢者
・免疫力が低下する状態(糖尿病、ステロイドなどの免疫を抑える薬を内服しているなど)
・他の持病がある(心不全、腎不全など)
などです。
こういった方はやはり普通の人では大丈夫なウイルスでも致死的になる可能性があります。
逆にこういった状態にある方はより注意が必要です。

潜伏期間とは?

よくニュースで潜伏期間という言葉を聞くと思います。
この潜伏期間とは感染してから発症するまでの間の時間を指します。
では感染と発症とはなんでしょうか。

感染とは?

感染(かんせん、英: infection)とは、生物の体内もしくは表面に、より体積の小さい微生物等の病原体が寄生し、増殖するようになる事。また、侵入等のその過程。
Wikipediaより
とあります。
知っておくべきことはウイルスや細菌が体に入った=感染ではありません。ウイルスや細菌が各臓器などに定着(住みついて)して増殖するようになって初めて感染と呼びます。
また病原体でない細菌が定着していることがありますがこれは感染と呼びません。例えば口の中などにはたくさんの常在菌といって普段から住んでいる菌がいますが別に感染しているわけではないのです。
発症とは?
文字通り症状が出ることを発症と言います
つまり潜伏期間とは病原性を持つ細菌やウイルスが体に侵入し、増え始めてから症状が出るまでの間のことです。不顕性感染(不顕性とは症状がないということ)や無症候性病原体保有者とも言います。
この期間は病原体によってまちまちです。新型コロナウイルスの場合2~10日が潜伏期間と呼ばれています。
なぜ潜伏期間が重要かと言うと、ウイルスは増えているのに症状がないため他の人に移しやすいからです。
もちろん発熱もないため空港で体温を測っても異常はありませんし、咳などの症状もないため健康な人と区別がつきません。検査の感度(的中する確率みたいなもの)もウイルスが少ないため下がってしまいます。
そのため今回の新型コロナウイルスの場合は武漢から日本へ帰ってきた人は10日間隔離された上で様子を見るということになっているのです。もし感染していたら10日間の間に発症するはずということです。

コロナウイルスの検査

PCR検査と呼ばれる検査を行います。

PCRとはある特定の遺伝子を数時間で100万倍以上にする方法です。

ウイルスとは遺伝子の入ったカプセルなので感染した人の痰やのどをぬぐった液などを新型コロナウイルスの遺伝子があればそれが増えるように設定したPCRの機械に入れることによって新型コロナウイルスの遺伝子がいたかどうかを判断します。

ほんの少しでも遺伝子があれば100万倍になるので陽性になります。

しかしまだウイルス量が少なく、たまたま採った検体(咽頭ぬぐい液、痰など)にウイルスの遺伝子が入っていなければ陰性になります。

そのため1回目で陰性でも2回目で陽性になることがあるのです。

参考
ウイルス模式図

核酸というのが遺伝子のことです。
カプシドはカプセルです。
エンベロープとは膜のことです。コロナウイルスはエンベロープウイルスです。アルコールはこのエンベロープを破壊できるのでアルコールでコロナウイルスは死滅します。
ノンエンベロープウイルスはノロウイルスなどが有名です。膜が無いのでアルコール消毒が効きません。

疑わしければまず保健所へ連絡

湖北省(武漢)にいた人と濃厚接触しっちゃった!どうしよう・・・

武漢に行っていた人はもちろん、新型コロナウイルスの感染者に濃厚接触してしまった人で咳や熱の症状が出てしまった場合、まず保健所に連絡しましょう。症状がなくても潜伏期間の可能性があるため発症者と濃厚接触した場合も同様に連絡し、指示に従ってください。

逆に咳や熱はあるけど特に新型コロナウイルスの感染者や武漢渡航歴がある人と接触していなければ普通のお医者さんに診てもらってください。

予防

予防は前に書いた記事の通りで特別なことは必要ありません。

家にいるときに大事なのは加湿器とアルコール消毒、手洗い、うがいです。

また、人混み(特に外国人観光客が多い場所)、閉鎖空間(映画館、飲食店、電車、飛行機)にはできるだけ行かないようにしましょう。

まとめ

肺炎、潜伏期間の意味を理解しよう!
きちんとした対応と予防をしよう!

コメント

  1. […] 肺炎ではこちらで説明しています。 […]