【新型コロナ】どうしてすぐ検査ができないのか

増え続ける新型コロナウイルス患者によりみなさん危機感を感じていることと思います。発熱が数日下がらない場合はコロナウイルス感染も心配になりますが保健所に連絡しても検査してもらえないことも多いみたいです。今回は実際にコロナウイルス感染を心配している発熱患者を外来で診察することのある自分の視点から国が少しでも疑う患者をすぐ検査しないのはなぜなのか考えます。

なぜすぐ検査をしないのか?

少し前まではPCRという検査の特性上、コストや時間がかかり、同時にたくさんの人の検査ができないことから、原因不明の肺炎やコロナウイルス感染者の濃厚接触者のみ検査をしてきました。

ただ現在は感染経路不明の症例が圧倒的に増加しており、濃厚接触しているかどうかはあまり問題ではなくなってきました。そしてPCRの検査のキャパシティーも増え、1日にたくさんの検査ができるようになってきています。

ならどうして検査してくれないの?もう熱が3日も下がらないんだよ!?

まず前提として感度、特異度について知識を持ってください。

現在コロナウイルスの検査であるPCR法の感度は未知です。

ですが80%以下であることが予想されています。

Correlation of Chest CT and RT-PCR Testing in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in China: A Report of 1014 Cases

という中国での1014人のコロナウイルス患者を調査した論文に1回目のPCR検査が陰性の患者で、繰り返し検査を行った64例中15例(23%)で陽性が発覚したからです。

つまり簡単にいうとこの64人のうち23%の人は「1回目陰性でも2回目以降陽性になる=偽陰性」だったということです。

つまり20%程度の人は陰性であっても今後陽性になる可能性があるということであり、感度(陽性者に陽性が出る確率)は80%程度であることが予想されます。

偽陰性が出てしまう原因はいくつかあります。

  1. 検査技師の技術的問題
  2. 検査試薬の限界
  3. 検体(痰や咽頭ぬぐい液)が不良
  4. 感染が初期でウイルス量が少ない

先ほどの熱が3日続く人の場合肺炎がなければコロナウイルス感染の初期の可能性もしくは感染しているが症状が軽微な可能性が考えられます。

偽陰性の確率は上がってしまいます。

偽陰性の可能性があっても陽性の可能性もあるんだから検査しないと!

その通りです。

検査をしないと感染者の正確な数や場所が把握できません。

ですがなぜ国は検査をあまりしないのか考えます。

そこで一つ思いついたのは偽陰性を理解できない人たちの存在です。

もちろん偽陰性のリスクを理解できている方々はたとえコロナウイルスPCRが陰性であっても上気道症状や発熱がある場合、コロナウイルス感染でないことが否定できないため仕事には行きませんし、外出もできるだけ自粛します。

結局発熱している本人の行動は検査の有無に関わらず変わらないのです。(軽症者はホテルなどで隔離されていますが、すぐ軽症者であふれることでしょう。ホテルにいることは安全なんでしょうか?)

ですがもし偽陰性が理解できない人に偽陰性が出てしまった場合最悪です。

自分はコロナウイルス感染ではないと考え、むしろ外出しやすいと考える人がいるかもしれません。

もしくは自分は自宅待機したくても職場から「PCR陰性なんだから来い!」と言われかねません。

正直感度80%は肺炎患者での結果なので症状がほとんどない(感冒症状のみ)ではもっと感度は下がると思います。

偽陰性が理解できない人が闇雲に検査をした結果「自分はPCR陰性だ」と言って外出するようになってしまえば元も子もありません。

これが自分の考えるすぐ誰にでも(軽症患者に)検査をすべきではない理由です。

でもさすがに誰しもコロナウイルスの脅威を実感してきており、外出の自粛に協力的になっているので検査を増やしても陰性だからといって外出する人は今の段階では多くないと感じます。

やはり結局のところ原因不明の肺炎や濃厚接触歴があったりして強く疑う場合に検査するのがまだ妥当と考えます。

感染者数増加による日本の混乱(買占めや里帰り)や医療資源の問題など総合的に考える必要があり、全世界の誰も検査をすべきか検査を制限すべきか判断することはできないと思います。

結局結果論でしか物事は言えませんね。。。

CTは?

じゃあPCR検査はいいから心配だからCTをやって!

確かに中国の先ほどの報告ではPCRよりCTの方が感度が高いという内容でした。

胸部レントゲンではごく初期の肺炎像はわからないことも多く、CTではより高感度で肺の異常を特定することができます。

ですがCTのハードルを下げるのもやはりおススメできない理由があります。

それは接触感染のリスクです。

発熱や軽い風邪症状の方全員にCT検査をするとします。

その場合一人の検査が終わったら消毒をするのですがもちろん簡易的なものになります。

CTは毎日1台で何十人もの人を撮影するので一人一人時間をかけることができないのです。

もちろん消毒が不十分であればCT撮影者間での接触感染が成立します。

せっかくコロナウイルスか心配で来るのにむしろCTを撮影したことで感染してしまう可能性があるのです。

理論上は無限にCTと時間があれば(被爆や医療費に関しては無視する)国民全員もしくは感冒症状のある人全員に胸部CTを撮ればコロナウイルス発見の可能性は上がると思います。

ですが現実的ではないのです。

検査をしてもしなくてもあまりやることは変わらない

結局検査をひたすらすべきなのか疑わしい人だけに限定すべきなのかはわかりません。

ですが前提として検査には高い確率で偽陰性があること、症状が全くなくても感染している可能性があることを考えると今の時期は不要不急の外出を控え、移さないようにマスクをするしかありません。

しかも特効薬がないため軽症であればむしろ病院に行くことが自分や他人の感染のリスクになります。

もちろん軽症でない場合(食事が採れない、息苦しい)は病院に行くべきです。

自分にできることを一つずつやっていきましょう。

検査は結局やった方がいいの?

検査のコストや偽陰性に対する間違った知識を除けばを検査をすることにデメリットはほとんどありません。

つまり検査がたくさんできるようになったら検査はたくさんすべきです(軽症例も含めて)。

ですが今の国の制度では高い検査前確率を持つ症例(強く疑われる人)しか検査をしてもらえません。

これは日本が決めていることなのですぐに変わることはありません。

とにかく検査をしていないコロナウイルス感染者が街にはたくさんいることと、自分も知らずのうちに無症候性の感染者になっている可能性があることをしっかり認識し

  1. 誰が触ったかわからないものに触った場合は手洗いもしくはアルコール消毒をする。
  2. できるだけマスクをして会話する。

みなさんお気を付け下さい。

まとめ

何かおかしい、自分はコロナウイルスではと思ったら保健所に相談!

検査してくれなくても自分で疑わしければ自宅で待機!

今の政府の方針が正しいかどうかは誰にも(政治家でも医師でも)わからないので自分自身でできることをやろう!

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