株式投資はいくら分散されたインデックスに投資してもハイリスクです。
株式のリスクをしっかり理解することでリスク許容度を超えた投資をしないようにしましょう。
過去10年のアセットクラス別のリスクとリターン
こちらより引用
この図は様々なアセットクラスのリスクとリターンを示したものです。
この記事はこの表の意味を理解することを目的とします。
この中で最も優れたアセットクラスはどれでしょうか。
投資の世界ではシャープレシオ(=リターン÷リスク)が高い程効率の良い投資先と言えます。
これらのアセットクラスの中でシャープレシオが1を超えているのは
- Investment Grade Bonds(投資適格債) 1.08
- Cooperate Bonds(社債) 1.05
- 1-5yr High Yield Bonds(ハイイールド債) 6.71
- Dividend-Paying Equity(S&P 500 Dividend Aristocrats) 1.15
の4種類です。
ハイイールド債
1-5yr High Yield Bondsとはハイイールド債のことです。
野村証券HPより
ハイリスクな債券といったイメージで良いと思います。
ですがリスクの高い(格付けが低い)債券であり、デフォルトや元本割れリスクもあるため長期投資に向いているとは言い難くいくら過去10年のシャープレシオが良くても自分はあまり投資する気にはなりません。
ハイイールド債についての詳細な評価はここでは割愛させていただきます。
もう少し勉強し、また別記事で評価したいと思います。
ちなみに参照元にはこのハイイールド債のリスクとリターンをこう定義づけています。
調べてもBloomberg Barclays US High Tield 1-5 Year indexがなんなのかわかりませんでした。
US Corporate High Yieldではなさそうだし・・・
equity(株式)
ここではequity(株式)に着目します。
株式のシャープレシオを比較しましょう。
- Global Equity(MSCI ACWI All Cap Index)0.54
- U.S. Large Cap Equity (S&P500)0.98
- U.S. Mid Cap Equity(S&P MidCap 400 Index) 0.80
- U.S. Small Cap Equity(S&P smallcap 600 value index) 0.82
- Dividend-Paying Equity(S&P 500 Dividend Aristocrats)1.15
- Emerging Markets Equity(MSCI Emerging Markets Index)-0.05
かっこ内は各々参照しているインデックスです。
ここで注目すべきは以下の4点です。
- U.S. Large Cap EquityはGlobal Equityより優れていた。
- U.S. Large Cap EquityはU.S. Mid Cap EquityやU.S. Small Cap Equityより優れていた。
- Dividend-Paying EquityはU.S. Large Cap Equityより優れていた。
- Emerging Markets Equityは投資する価値がなかった。
各々考察してみましょう。
1.U.S. Large Cap EquityはGlobal Equityより優れていた。
これはつまりS&P500がMSCI ACWI All Cap Indexより優れていたことを意味します。
ここから言えることは
- 世界分散よりS&P500に投資した方がシャープレシオが優れている。
- S&P500の方が世界分散よりリスクが低い
ということです。
みなさんは広い地域に分散すればするほどリスクは下がると考えているでしょう。
ですが実際には理論的にはそうであっても短期(10年)のスパンで言えばこういうこともあるのです。
あなたはこれから何百年も投資するわけではありません。たかだか20~30年程度だと思います。
20年程度では世界分散より米国集中投資の方がリスクが減る可能性があると考えられます。
こちらでもそのことについて触れています。
またリスクだけでなくリターンの点でも米国集中投資は世界に分散するよりも優れていました。
このことから米国株式+現金オンリーのポートフォリオが存在するのです。
ただし注意しなければならないのはこの数値はあくまで過去10年の評価です。
過去10年では新興国株があまりにも不遇だったため全世界分散が米国集中に大きく負ける結果となってしまいました。
未来20年はどうなるでしょうか・・・
2.U.S. Large Cap EquityはU.S. Mid Cap EquityやU.S. Small Cap Equityより優れていた。
ここから言えることは簡単です。
米国株投資においてS&P500のみに投資した方が、米国全体に分散するよりシャープレシオが良いということです。
言い換えればVOOの方がVTIより優れているということです。
過去10年はGAFAMの力が圧倒的過ぎましたからね。
未来はどうなるでしょうか。
こちらのグラフはS&P500 の構成銘柄のFAAMG(GAFAMと一緒です)とその他495社でPERを比べたものです。
PERとは株価÷1株当たり純利益(EPS)で算出され高ければ高い程割高と言えるのでしたね。ある意味人気の指標でもあります。
この図からはGAFAMのPERは急上昇していることがわかります。
PERが高いということは割高なのですが、それにも関わらず人気の方が凄まじいためどんどんPERが上昇しています。
どう考えてもこの傾向が永遠に続くとは思えませんのでGAFAMの個別株を持っている方はどこかで売り時を考えてはいかがでしょうか。
結果的にもし10年前に戻れるならVTIよりVOO、VOOよりGAFAMを買った方がパフォーマンスは良かったと言えますね。
3.Dividend-Paying EquityはU.S. Large Cap Equityより優れていた。
Dividend-Paying Equityの参照しているインデックスはS&P 500 Dividend Aristocratsです。
S&P 500 Dividend Aristocratsとは25年以上連続して配当金の支払いを増やしたS&P 500インデックス構成銘柄のことです。具体的には以下の銘柄約50社のインデックスです。
- 25年以上連続増配
- S&P500に入っている
- 時価総額30億ドル以上
なんとS&P 500よりS&P 500 Dividend Aristocratsの方がより高いシャープレシオでした。
それならこのインデックスに投資したいと考えますよね?
S&P 500 Dividend Aristocratsに連動するインデックスETFとしてNOBL(ProShares S&P 500® Dividend Aristocrats ETF)があります。
ですが人気はありません(笑)
ETFの純資産額ランキング(2020年7月)を見ると
とS&P500が圧倒的なことがわかります。
もちろんNOBLはランク外(100位以下)です。
でも過去10年に限って言えば高配当株投資も全然アリ(むしろ良い)だったのです。
4.Emerging Markets Equityは投資する価値がなかった。
新興国株のシャープレシオはマイナスになっています。
これはもう投資するくらいなら定期預金の方がマシということを意味しています。
これをみなさんはどう評価するでしょうか。
まだ伸びしろがあるとして保持し続けるのか、それとも少し上昇する兆しが出るまでは米国、先進国集中投資にするのか。
あなたの投資センスが問われるところです。
おまけ
インベスターZという投資漫画に人口ボーナスという表現があります。
見たことない方に説明すると、人口ボーナスとは「その国の生産年齢人口の増加によって消費が増え、経済が活発になる状態」を指します。
つまり人口が増え続ければ株価も上昇するという予想ができるのです。
同様に新興国も人口が増え続けており、この人口ボーナスが発生し、株価が上昇するのではないかと言われていました。
しかしこの図を見てもらえばわかる通り、2010~2019年では新興国が明らかに人口ボーナスの時期であったのにも関わらず、株価は全く伸びませんでした。
あなたはこれから人口が増え続ける新興国に投資し続けますか?
株式のリスクとリターンを考慮してシミュレーションしてみよう
株式はハイリスクハイリターンです。
ここからはおまけですが全世界株式を例に取り、シミュレーションしてみましょう。
リターンは6.75%、リスクは12.5%です。仮にこのリスクとリターンを取り続けるとどうなるでしょうか。
あなたは積み立てNISAで月3.3万円、全世界株式インデックスに20年積み立てるとします。
おなじみ明治安田アセットマネジメントから引用します。
一方良く用いられる楽天証券シミュレーションでリスクの評価なしにシミュレーションすると
かなり印象が変わりますね。
もしあなたが少し投資に慣れてきたらこのリスクを評価して未来をイメージするようにしましょう。
20年後に思うように総資産が増えている確率は50%もないかもしれませんよ!
まとめ
過去10年ではS&P 500 Dividend Aristocratsに投資するのが最もシャープレシオが良かった。
また、全世界より米国、米国全体よりS&P500 に投資する方がシャープレシオが良かった。
未来は読めないけれど少しずつ株についての知識を深めていきましょう!
コメント
[…] まずはシミュレーションに用いる各数値を調べます。 株式については前回記事より過去10年の全世界株式のリターン6.75%、リスク12.50%を用います。 […]
[…] 先進国株式のリスクとリターンはこちらの記事でも紹介した全世界株式の10年の平均リスク・リターンを参照しています。 […]