資産(銘柄)の分散であなたの資産のリスクを下げよう!

時間分散(ドルコスト平均法)や地域の分散の話を以前させていただきました。

再度金融庁の図を借ります。

今回は資産(銘柄)の分散に関する考察です。

資産三分法という理論があります。

資産を「現金」「土地(不動産)」「株」の3つに分けて所有することで総資産のリスク(標準偏差)を減らすことができます。

あなたの総資産における「現金」「土地(不動産)」「株」などの資産の割合をポートフォリオと言い、ポートフォリオの各資産の割合を調整することにより、リスクとリターンのバランスを取ることをアセットアロケーションと言います。

ここから先リスクという言葉を多用しますがリスク(標準偏差)のことです。それ以外の意味でリスクという単語は使用しません。必要があれば別の表現で表します。
この記事では2種類の分散について別々に考察します。
  • 銘柄の分散
  • 資産の分散

説明しやすくするために銘柄の分散から説明していきます。

銘柄の分散

出典

この図をご存知でしょうか。

分散投資によって回避できるリスクをアンシステマティックリスクと言い、分散によって回避できないリスクをシステマティックリスクと言います。

一般あざらし
一般あざらし
いきなり何言ってるの??

横軸に銘柄数とありますが、銘柄を分散すればするほどシステマティックリスクを下げることができます。

少し難しい言い回しになりますがシステマティックリスクとは市場そのものに存在するリスクでその市場内で取引している以上絶対にシステマティックリスクは負わなければなりません。

システマティックリスクの例としては金利、政策、災害(今回のコロナウイルスも含まれる)、景気の悪化などです。その市場全体に影響を与えるので分散してようがあまり意味はないのはイメージが付きますね。

一方アンシステマティックリスクとは株個別のリスクのことです。

例えば「経営陣が不祥事を起こして株価が下がる」「コロナウイルスにより需要が高まり株価が上がる」などです。

個々の会社の影響によるリスクがアンシステマティックリスクです。

理論上全ての銘柄に投資すればアンシステマティックリスクは限りなく下げられます。一つの企業の株価が暴落しても他の企業には大きく影響がないのは当たり前ですね。

つまり銘柄を分散するのはこのアンシステマティックリスクを下げるためと言えるのです。

このアンシステマティックリスクを下げるためには銘柄の分散が必要ですが、あまりにリターンの低い銘柄を組み入れては意味がありませんね。なのでS&P500や日経平均株価などは選抜した銘柄だけが組み込まれているのです。理論上は銘柄を分散すればするほどアンシステマティックリスクは下がりますが75銘柄以上に分散してもそれ以上の分散はあまりリスクの減少効果がないという話もあります。もちろん組み入れる銘柄のセクターなどの考慮しなければなりませんが・・・

資産の分散

資産の分散はいろいろと解釈があります。
ここでは2種類の資産の分散について考察します。
  1. 「無リスク資産=現金」と「有リスク資産=株など」に分散する効果
  2. 「有リスク資産=株など」を「海外株式」「海外債券」「国内株式」「国内債券」「海外REIT」「国内REIT」「金」などへ分散する効果

「無リスク資産=現金」と「有リスク資産=株など」の分散効果

【まず初めに】必ず理解しておきたいこと!【投資】

で紹介したように、資産は無リスク資産(値動きがない資産=現金)と有リスク資産(値動きがある資産=株など)にまず分けられます。

なぜ分けるかは当たり前ですがあなたの資産のリスクを減らすためです。

お金が欲しいからと言って、全ての資産を株に変える人はいませんよね?それはリスクが高すぎるからです。

リスクを下げるためにあなたは現金を持っているのです。

あなたの無リスク資産とリスク資産のリスクを合計すること資産全体のリスクが計算できます。

長期投資予想/アセットアロケーション分析 ~ 投資信託のガイド|ファンドの海
あなたの運用資産のリスクはどれくらいですか? 期待リターンはどれくらいですか?グラフで結果を分かりやすく表示します。

こちらなどでシミュレーションができます。

さあシミュレーションしてみましょう。

あなたは現金2000万円を持っていたので資産運用をしたいと思い、VOOを1000万円分買いました。

するとあなたのポートフォリオは

シンプルですね!笑

このまま20年この2000万円分の資産を放置するとどうなるでしょうか。

先ほどのシュミレーターで計算します。

現金の欄がないため新興国株の欄を使用しています(相関係数は0に設定)。現金はリターン0.01%(銀行金利)とし、リスクは0にします。(厳密にはこの計算方法は間違っていますがイメージをするために使用します)

先進国株式はVOO(S&P500に連動したETF)を元にここ5年の成績であるリスク14.81、リターン6.76とします。(10年の方がリターンが良いですが、良すぎなので5年を採用しています。出典

その他の日本債券、日本株式、国際債券はこちらより20年後の予想を用いています。

すると

あなたの資産全体の期待リターン、リスクが表示されます。

このリターンやリスクを元に何%の確率でどれくらいの金額になるか計算すると

20年後元本割れの可能性は2.7%です。

一方無リスク資産を持たないで全てVOOに投資すると

当たり前ですがポートフォリオ全体のリスクとリターンが上昇し、元本割れの可能性も3.5%と上昇しました。

ですが70%以上の確率で先ほどのポートフォリオより運用結果が+1000万円も増えています。

リスクを取るとリターンも大きいというのが分かりますね。

ですがこの2つの比較で言いたいことはそういうことではなく、あくまでポートフォリオは無リスク資産と有リスク資産の合計で評価すべきという点です。

現金の割合もポートフォリオのリスクとリターンに大きく影響を与えるのです。

投資というと有リスク資産だけを考えがちですが、資産運用全体を考えると現金の割合というのが重要ということがおわかりいただけたでしょうか?

有リスク資産がいくら効率が良くてもポートフォリオの現金比率が多ければ俗に言う機会損失につながります。

おまけ

ここでは少し難しい話になります。

先ほどの「現金とVOO半々」「全額VOO」でどちらが効率が良い投資かわかりますか?

それを理解するためにアセットアロケーション分析を見てみましょう。

こちらは「現金とVOOを半々」の場合です。

こちらは「全額VOO」です。

効率的フロンティア曲線とはリスクにおいて最大のリターンを得ることのできるポートフォリオをプロットしたグラフです。

簡単に言うと最も効率(リスクに対するリターンの良さ)の良いポートフォリオはこの効率的フロンティア曲線に一致します。

ですが人により取りたいリスクが違う(リスク許容度が違う)のでリスク許容度毎に最高のポートフォリオがただ一つ決まるのです。

このグラフ上は青い点の上辺に近い程効率的フロンティア曲線に近いです。

どちらが効率的フロンティア曲線に近いと言えるでしょうか。

それはもちろん「全額VOO」です。

あくまで効率(専門用語でシャープレシオ)を求めれば現金を持たないでVOOだけ持った方が良いです(各資産のリスク・リターンがあくまで先ほどの表通りであった場合)。

ですが全額VOOというのはさすがにやりすぎだと感じると思います。それはリスクが高すぎるからですね。

あくまで効率的フロンティア曲線に近い方が効率は良いですがリスク許容度は人によって異なりますし、資産を使う時のことを一切考慮に入れていません。

ですがこの効率フロンティア曲線の考え方は重要で、リスク許容度の範囲であなたのポートフォリオ全体のリスク・リターンが最大効率になるように資産を分散していくというのが必要なのです。

そう考えると金融商品において大事な要素はリスクとリターンであることは明らかです。

この考え方がある方なら

  • グロース株投資より高配当株投資が優れている
  • リターン10%の商品はリターン8%の商品より優れている
  • 株の方が債券より優れている
  • 金投資は意味がない

などと言ったことは言わないはずです。

あくまでリスクとリターンがあり、自分のポートフォリオに組み込んだときにリスク許容度の範囲内で効率を上げるのであれば組み込むべきだし、効率が下がるのであれば組み込まない方がよいというだけなのです。

リスクは比較的過去の実績から推定できますがリターンの推定は困難です。米国株は現時点で最も効率の良い投資先ですがリターンが下がれば別の投資先の方が良くなることも考えられます。このリターンが読めない(未来が読めない)ことが投資最大の難しさでしょう。

ちなみに先ほどのリスク・リターンであれば左上(つまり高効率)にしたければ先進国債券とVOO(先進国株式)の比率だけ調整すれば良く、日本債券や日本株式はポートフォリオに入れれば入れるほど効率が落ちます。

このへんが米国株式一本投資が現状最適解である理由です。

リスクに対するリターン(シャープレシオと言います)が株式の中では圧倒的に米国株が強いのです。

もちろん全額株式ではリスクが高すぎるため現金を持つことをおススメしますが、より効率を上げるにはリスク許容度に合わせて海外株式(米国株)+海外債券(米国債券)が理論上最高効率(効率的フロンティア曲線に近づく)です。

「有リスク資産=株など」を「海外株式」「海外債券」「国内株式」「国内債券」「海外REIT」「国内REIT」「金」などへ分散する効果

日本と米国という地域の分散に比べ、株式と国債という資産の分散の影響の方が圧倒的に効果が高いです。

理由は明確で株式なら株式、債券なら債券と根本の性質が変わらないためリスクやリターンは地域というより、その資産の性質(株とか債券とか)の方が影響が強いからです。

もっと専門的に言えば相関が「海外」と「国内」より「株式」と「債券」が低いからです。

株や債券の他に有名な資産の種類としてはREIT、金などがあります。

それぞれ見ていきましょう。

REIT

REITは不動産投資の一種です。

こちらを参考にすると国内REIT(リターン7.6、リスク18.7)、海外REIT(リターン8.3、リスク22.1)とどちらも株式よりハイリスクハイリターンとなっています。

これらをポートフォリオに組み入れることで株式オンリーより効率を下げることなくハイリスクハイリターンなポートフォリオを作ることができます。

金投資に関してはこちらで以前説明しました。

金は有名なファンドとしてiシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)があるのでそのリスクとリターンを見てみます。

もともと値動きの少ない(=リスクの少ない)資産ですが、コロナショックで大きく値上がりしており、ここ1年のリターンがバグレベルで良いです。

正直この(リターン29.98、リスク9.63)がずっと続くのであれば全ての資産をこのファンドに投資することが最適解になります。(脅威のシャープレシオ3.12)

先ほど絶賛したVOOでもシャープレシオ0.456ということを考えるといかにおかしいかが分かりますね。

5年で見ても成績がすごいです。シャープレシオはVOOに匹敵します。

VOOよりローリスクローリターンで運用していきたければ現金とこのファンドだけで完成してしまいます。

ですがそんなに金投資が素晴らしいかと言われるとそうでもありません。

もちろんこのまま金が右肩上がりで上昇すれば米国株投資を上回る金融商品と言わざるを得ないですが、宝の地図と言われる1802年に1ドル投資した各資産がいくらになったかを示す有名なチャートによると

Real Returns Favor Holding Stocks.AAII Journal / August 2014より

Stock(株)がGold(金)を圧倒的に上回っています。

ちなみにBonds(長期国債)、Bill(短期国債)、Dollar(現金)です。現金は持っているだけで価値が下がることもわかりますね。

ここ数年は金が上昇し続けていますが長期的に見て金が値上がりするかはわかりません。

基本的にはローリスクローリターンな資産とお考え下さい。

金投資のメリットとして株式や債券などへの相関係数が低いことが挙げられます。分散効果は相関が無い程基本的に上がるので資産の分散効果は高いと言えます。

その他

その他としては不動産(現物)や仮想通貨もあります。

現状自分は投資する対象には考えていません。

理由は明確でリスク・リターンの推定が今までの資産よりも難しいからです。

値動きが大きすぎるものはリターンどころかリスクの評価すら困難ですしね。

不動産(現物)も仮想通貨も現時点で株式などとの相関が低いのも魅力の一つです。

まとめ

銘柄の分散はアンシステマティックリスクを下げるために有効です。

資産の分散は資産同士の相関が低いほど効果が高いです。地域の分散に比べリスクに対する影響は一般的に大きいです。

リスクを減らすと言うより、ポートフォリオ全体で自分の取れる最大のリスク(リスク許容度)で最大のリターンが得られるように資産を組み合わせるのが資産の分散の目的(投資全体の目的)です。

私見

理論上効率が上がるように複数の種類の資産を組み合わせることが良いのですが、その場合資産価値の変動に合わせて行わなければならないリバランスの手間が増えていきます。

自分は多少効率が落ちてもリバランスの手間や手数料などのコストを下げるために現金+インデックスファンド(全世界or米国)が現状最適解だと考えています。

これなら積立額を調整するだけでリバランス可能です。

投資
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Dr.Dの資産運用

コメント

  1. […] の効率(シャープレシオ)は悪くなります。こちらは少し参考になると思います […]