まずは配偶者の税制上の扶養を理解しよう!
2種類の扶養
扶養という言葉の意味は「自力で生活できない者の面倒をみ、養うこと。」と辞書にあります。
主に配偶者や子供が対象になりますが、扶養になると国から「他の人を養っているのだから税金や社会保険料をサービスするよ」と金銭的な援助を受け取れます。
ただややこしいことにパートで年収○○万円以上稼ぐと損するなどといろいろな情報があり、自分が何に該当して調整するとどれだけ得になるかわかりづらいのが現状です。
そこで簡単にまとめてみます。
まず扶養には2種類あります。
『税制上の扶養』と『社会保険上の扶養』です。
これは別々に考える必要があります。
税制上の扶養
この扶養になると『配偶者控除』『配偶者特別控除』の対象になります。
つまり夫の税金が減ります。
まず『配偶者控除』から
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。国税庁HPより
⑴と⑵は特に問題ありませんね。
問題は⑶です。
これが年収103万の壁の正体です。
その理由は「給与所得控除」の存在です。
給与所得控除とは?
給与所得控除とは給与をもらっている人つまりサラリーマンに対する控除です。
自営業の方は自分で経費を計算して確定申告します。
経費は収入から控除され、その分所得税や住民税が減ります。
しかしサラリーマンは仕事のために買ったネクタイやボールペン、靴などを経費として収入から控除することができません。医師の場合、聴診器や学会の年会費(毎年数万円)や各種試験の費用も経費にはなりません。
そうなんです。確定申告で自分で経費を決められる自営業より会社勤めのサラリーマンは税制上不利になります。
その不利をカバーする目的にあるのが給与所得控除です。
実際の金額は
国税庁HPより
となります。
ここで注目してほしいのは一番上の段なのですが、令和元年まではどんなに年収が低くても最低65万円の控除が受けられます。令和2年からは最低55万です。
さらに基礎控除というものがあります。
基礎控除はどんな人にもある控除でみなさん一律でしたが令和2年から高収入の方は基礎控除が減額になりました。お金持ちの税金はどんどん上がっていきます。
国税庁HPより
勘の良い方はもう理解できたと思います。
令和元年までは最低でも給与所得控除65万+基礎控除38万=103万
税制が変わった令和2年以降でも最低で給与所得控除55万+基礎控除48万=103万
つまり年収103万までは課税所得が0円となり所得税が0円になるのです。(※住民税はかかります。)
これは給与所得控除が文字通り給与でないと控除されないので年金など給与以外の収入しかない場合、基礎控除の38万しか控除されないためです。
逆に給与自体が103万以内でも年金や退職金などをもらっている場合は配偶者の合計所得金額が高くなるので『配偶者控除』を夫は受けられません。
国税庁HPより
もう一つ条件があります。
それは納税者(夫)の収入です。
国税庁HPより
簡単に言うと夫の収入が1,220万円(いろいろ計算すると年収がこれくらいになる)を超えると『配偶者控除』は控除を受ける対象であっても0円になってしまいます。
残念・・
あきらめるのはまだ早いです、
そのために『配偶者特別控除』があります。
配偶者特別控除は『配偶者控除』が受けられない人のもう一つの配偶者控除です。
国税庁HPより
⑴は夫の収入が高すぎるとだめですよということです。
『配偶者控除』と同じです。
⑶はあまり考えなくて良いので省きます。
⑵はほとんど『配偶者控除』と同じです。
しかし「二」の部分が違います。
年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
でしたが
年間の合計所得金額が38万円超123万円以下(令和2年分以降は48万円を超え133万円以下)であること
と配偶者の年収の範囲が違います。
国税庁HPより
分かりずらいので具体的に言うと給与での年収150万までなら『配偶者控除』と同じ最大38万円の控除が受け取れます。
そこから収入が上がるにつれて段階的に控除額が減っていき、年収201万円で0になります。
以上が『配偶者控除』と『配偶者特別控除』の説明になります。
年収を調整しないと損する?
少しまとめます。
夫の年収が1220万以上⇒『配偶者控除』、『配偶者特別控除』は受けられません。妻が『税制上の扶養』になる意味はないということです。好きなだけ稼いでも夫の税金は変わりません。
夫の年収が1120万~1220万⇒一定金額の『配偶者控除』、『配偶者特別控除』を受けられます。配偶者の年収に応じて控除額が決まります。
夫の年収1120万かつ配偶者の年収150万以下で最大の26万円の控除です。夫の年収が1170~1220万かつ配偶者の年収が197万~201万で最低の1万円の控除になります。
夫の年収が1120万以下⇒配偶者の年収に応じて『配偶者控除』、『配偶者特別控除』が受けられます。最大は配偶者の年収が150万以下で38万円、最小で3万円の控除です。
これでもややこしいですね。
例として年収600万と年収1200万の夫がいた場合で考えてみましょう。
A:年収600万円の場合
課税所得は約301万円になり、所得税率は10%です。住民税10%と合わせて計20%の税率です。
つまり課税所得が10000円増えると大体2000円の所得税+住民税を払うことになります
これは逆に言えば10000円控除が増えれば2000円税金が安くなるということです。
グラフにしてみます。
横軸は妻の年収です。
もし年収がほんの少し規定範囲を超えたとします。
年収175万円では配偶者特別控除は26万円、年収176万円では配偶者特別控除は21万円です。
この場合配偶者特別控除額は5万円に減額されてしまいます。その場合夫の所得税+住民税が1万円増えてしまいます。
妻の1万円収入が増えて夫の税金が1万円増えるということです。つまり働き損ですね。実際は妻の所得税、住民税額も増えるのでむしろマイナスです。
年収160万と年収161万でも同じことが起きます。
B:年収1200万円の場合
課税所得は約770万円になり、所得税率は23%です。住民税10%と合わせて計33%の税率です。
つまり課税所得が10000円増えると大体3300円の所得税+住民税を払うことになります。
これは逆に言えば10000円控除が増えれば3300円税金が安くなるということです。
グラフにしてみます。
こちらの夫婦の場合でも1万円多く稼ぎ過ぎてしまうことで夫の税金が最大6600円増えてしまいます。
と言いたいところですが給与収入金額を1万円単位で調整するのはものすごく難しいと思いますので現実的にはあまり気にしても仕方ないかもしれません。
ただ妻のパートのコスパは以下の通りに評価できます。
年収 | 控除 | 妻の所得税+住民税 |
---|---|---|
~103 | 最大受けられる | なし |
103~150 | 最大受けられる | あり |
150~201 | 一部受けられる | あり |
201~ | 受けられない | あり |
夫の年収が1220万超えている場合は配偶者の税制上の扶養は無視して良いです。
妻の年収が150~201万円の場合のみ夫の年収に応じて一部損する(あと1万円収入が低い方が手取りが高かった)場合があります。
ですが先ほど申し上げた通り1万円単位で年収をコントロールするのは難しいのであくまでコスパよく(税金をなるべく払いたくない)働く場合に調整する程度で良いと思います。
ここまで言っておいてなんですが扶養において大事なのは『社会保険上の扶養』です。
次回は『社会保険上の扶養』についてまとめます。
まとめ
稀に働き損が発生するが基本的に働いたら働いた分だけ手取りは増える。
扶養内で働くことを意識するなら『社会保険上の扶養』の理解の方が大事!
コメント
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