金投資については
こちらで以前解説しています。
昨今の金相場の上昇は凄まじく、コロナを含む世界情勢への不安がそうさせていると考えられます。
ここまで急上昇すると金への投資が魅力的に見えませんか?
自分も含めそんな投資家に向けて「本当にあなたのポートフォリオに金は必要か」を考えてみることにしましょう。
Contents
金のチャート
こちらはGLD(SPDRゴールド・シェアーズ)の5年のチャートになります。
ウェルスナビでのポートフォリオにも採用されている金のETFですね!
以前の記事で示した通り金に投資するなら現物よりETFをおススメします。
現物投資や純金積立は手数料や流動性の点でETFに劣るからですね。
このチャートを見て金は安定資産と言えるでしょうか。
もっと長い目で見てみましょう。
2005年から15年で3倍程度値上がりしています。
ここでSPY(S&P500 連動のETF)と比較すると
こちらも2005年からの15年で約3倍になっています。
世間一般のイメージでは金は値動きが少なく、安定資産と言われていたりします。
ですが本当に安定(低リスク)資産と言えるのでしょうか。
ここでGLDのリスクを見てみましょう。(yahoo financeより)
10年でのリスク(標準偏差)は16.05となっています。
ちなみにSPYの10年でのリスクは13.38となっています。
ここで「ん?」と思った方も多いと思います。
なんとGLDの方がSPYより高リスクなのです(あくまで過去10年での話)。
金は株よりずっと値動きが少なく、低リスクだと思っている方は考えを改めなければなりません。
金ははっきりと「リスク資産」と言えます。
リスクを取っても金に投資する価値があるか
次にこの「リスク資産」であるGLDに投資するべきかを考えます。
何度も言っていますがポートフォリオとは無リスク資産と有リスク資産の合計であり、できるだけ低リスクで高リターンを得られるポートフォリオが優秀と言えます。
このリスクに対していくらリターンがあるかを示す指標がシャープレシオでしたね。
シミュレーションの前提条件
あなたは1000万円の資産を保有しており、300万円(30%)を無リスク資産(現金)で保有し、残り700万円を有リスク資産としようと考えました。
700万円のうち100万円(全体の10%)をGLDに投資した場合としなかった場合でポートフォリオ全体のリスクとリターンがどうなるかシミュレーションします。
日本債券=現金、先進国株式=全世界株式、新興国株式=GLDとして数値を代入します。
相関係数は以下の通りです。(先進国株式と新興国株式の相関0とする。)
シミュレーション結果
1.総資産の10%をGLDにした場合
シャープレシオは0.569となりました。
2.GLDを組み入れない場合
シャープレシオは0.539となりました。
結果としてはGLDを少量(15%程度)持つのが最も全体のシャープレシオを上げられるとなりました。
ここまでGLD自体のシャープレシオは低いのにも関わらず、少量組み入れることでポートフォリオ全体のシャープレシオを上げることができるのには大きな理由があります。
それはこの前提条件で0にしている相関係数の影響です。
一般に株と金の価格は相関しづらいものであり、相関係数は先ほど示した通り0に近いことが多いです。
相関係数とポートフォリオのシャープレシオの関係
そこで相関係数とシャープレシオの関係をイメージするため、株と金の相関係数を-0.25、0、+0.25の場合で比較しましょう。
1.相関係数-0.25の場合
シャープレシオ0.626
2.相関係数0の場合
シャープレシオ0.574
3.相関係数0.25の場合
シャープレシオ0.533
これらの結果から相関係数が低ければ低い程シャープレシオが上がることがわかります。
これは少し考えれば当然で相関係数が低ければ低いほど株価と逆に動くので株価下落のリスクヘッジとなるためポートフォリオ全体のシャープレシオが向上するのです。
GLDをポートフォリオに入れる一番のうま味はみなさんのポートフォリオのメインである株式と相関係数が低いことです。
ここまで見るとGLDをポートフォリオの隠し味として加えることはポートフォリオ全体のシャープレシオを向上させ、理論的にも有意義であると言えます。
でも自分はGLDを入れません!
自分がGLDを入れない理由
ここまでGLDをポートフォリオに入れることの有用性を示しましたが自分はポートフォリオに組み入れていません。
その理由は以下の2つです。
- 理由1:シャープレシオを追求するポートフォリオをそもそも組んでいない
- 理由2:シャープレシオを上げるのであれば債券の方が良い
理由1:シャープレシオを追求するポートフォリオをそもそも組んでいない
あくまでGLDどれくらい入れると良いのかはそのポートフォリオによります。
自分はドルコスト平均法で積み立てしており、まだ自分のポートフォリオを確立していません。
そのためポートフォリオのシャープレシオを上げるという考え方自体がまず不要です。
なぜポートフォリオを確立させないかと言うとまだ勉強中だからです。
ドルコスト平均法で淡々と積み立てているのもポートフォリオが確立していないためです。
ポートフォリオが確立していればドルコスト平均法ではなく、数か月~1年単位でのリバランスを行うことが望ましいです。
無リスク資産を保持しているだけでシャープレシオは下がってしまうからですね。
ここら辺の話が理解できない場合は
【投資初心者卒業!】ドルコスト平均法【リスクは下がらない!?】
も参考にください。
シャープレシオをそもそも追及していないのに、敢えて期待リターンの低いGLDなどのアセットを組み入れる理由は自分にはわかりません。
当たり前ですが、自分のポートフォリオ全体のリスクとリターンが分かっていてこそGLDの適切な配分などが計算できるのです。
理由2:リスクを下げるのであれば債券の方が良い
GLDより株価に対して相関係数が低いアセットの代表として債券があります。
こちらはAGG(iシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF)とVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)の相関係数を示しています。
実はこのコロナショックにより様相が変わってしまいました。
通常株と債券は逆に動くことが多く、コロナショック以前は相関係数がマイナスで推移していました。
そのためポートフォリオに債券を組み込むことでポートフォリオ全体のリスクを大きく下げ、シャープレシオを上げることができました。
しかし、コロナショックでは株価の急落と同時に債券も急落し、相関係数がプラスになっています。
この状況を特殊なものとして債券をポートフォリオに組み込むかは個人の考え方次第ですが、昨今では債券をポートフォリオに組み込むうま味は減っています。
ですが今までの債券と株の相関係数を参考にするならGLDを組み込むよりAGGを組み込んだ方がよっぽどシャープレシオは改善します。
参考
先ほどの1000万円の資産の内10%をGLDではなくAGG(相関係数-0.25)に投資した場合
シャープレシオは0.594となり、GLD(相関係数0)の場合の0.569より高くなりました。
ちなみに相関係数+0.25でもシャープレシオは0.583となります。
当たり前ですが期待リターン、リスク共に改善が認められます。
あくまで過去10年のGLD、AGGの比較ですが自分はGLD(金)に投資するくらいならまずAGG(債券)に投資します。
まとめ
金投資(GLDへの投資)はポートフォリオによっては少量加えることでポートフォリオ全体のシャープレシオを上げることができる。
ただポートフォリオが完成していなかったり、リバランスをしないのであればそもそもシャープレシオを改善させる意味合いは少ない。
もしあなたが確立したポートフォリオを持っているのであれば金や債券をポートフォリオに組み込んではどうでしょうか。
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