【感度と特異度】コロナウイルス検査は信用できる?

感度と特異度を理解して偽陽性、偽陰性の意味を理解しよう!
検査は万能ではない!
doctor holding red stethoscope

コロナウイルスの診断はどうやってするの?

連日ニュースで話題になっているコロナウイルスですが3/5にコロナウイルスのPCR検査が保険適応になります。

NHKニュースではこう報道されました。

保険が適用されれば、保健所を介さずに医師の判断だけで民間の検査会社や大学などに検査を依頼することができるようになります。厚生労働省によりますと、検査の単価は最大で1万8000円で、窓口での負担額は、3割負担で5400円となりますが、公費で全額補助する方針です。

つまり医師が検査を依頼し、その費用負担は全て国が行うということです。

これで本当にコロナウイルスにかかっているかはっきりできる!

ですがそう簡単にいかないのでその理由を解説します。

検査は1日4600件まで!?

検査は無限にオーダーすればできるわけではありません。1日の件数に制限があります。

4600件という数字は多いのでしょうか。

厚生労働省の医療施設動態調査によると平成30円3月時点で約8400の病院と約10万の診療所があることがわかります。

つまりクリニックレベルで検査をしていたら4600件なんてあっという間ということです。

件数が限られる理由はPCR検査が少し面倒な手順を踏まないと検査できないためです。

以前の投稿でも説明しましたがウイルスは遺伝子の入ったカプセルです。

PCR検査はこの遺伝子がいるかどうか判定する検査です。

そこまで技術的に難しいわけではありませんが普通の血液検査よりは時間と人手つまりコストがかかります。

感度・特異度が100%でない

感度、特異度という言葉は医師は当たり前のように日常業務で使用しますが、一般の方にはなじみのない言葉だと思います。

検査の有効性とかを判断するのに使用するのですが簡単な例を用いながら説明します。

例えば100人にある癌の検査をして陽性、陰性の人の中にこれだけ本当の癌の人がいたとします。

表にまとめるとこうなります。

癌あり 癌なし
陽性 1 10 11
陰性 1 88 89
2 98 100

100人中実際に癌だった人は2人なので有病率(患者数/検査数)は2%ですね。

さてここで偽陰性偽陽性について説明します。

この表で言うと以下の通りになります

癌あり 癌なし
陽性 1(真陽性) 10(偽陽性) 11
陰性 1(偽陰性) 88(真陰性) 89
2 98 100

真陽性(癌あり、陽性):1人
偽陽性(癌なし、陽性):10人
偽陰性(癌あり、陽性):1人
真陰性(癌なし、陰性):88人

偽陽性とは癌がないのに検査が陽性になることです。

反対に偽陰性とは本当は癌があるのに検査は陰性なることです。

どちらも検査結果だけを信じてしまうと全く逆の結果になってしまいます。

実はこの4つの数から感度と特異度を計算することができます。

感度真陽性/真陽性偽陰性

簡単に言うと「検査で病気を見つけられる確率」です。

この癌検査の例でいうと50%です。

例えば感度98%のインフルエンザウイルス検査があるとします。100人のインフルエンザ患者(別の検査などで確定診断がついている)にこの検査を行うと98人が陽性となります。しかし、逆に言えば2人は検査陰性ですがインフルエンザであることになります。

しかしどんな検査も感度100%にはなりません。つまり必ず偽陰性の患者が出てしまうのです。

コロナウイルスのPCR検査の場合であればたまたまぬぐった咽頭(のどの奥)にウイルスがほとんどいなかったときにコロナウイルスに感染してても陰性になってしまいます。

インフルエンザの検査であれば感染初期はウイルスの量が少なく、検査しても陰性=偽陰性になることがあります。

良く発熱して24時間経たないと検査できないとクリニックで言われるのは偽陰性の可能性が高くなるからです。

検査する人の腕なども関与してくるため同じ検査でも場所やタイミングが異なればで感度が異なることがご理解いただけるでしょうか。

コロナウイルスのPCR検査で言えばPCR自体はとても感度の高い検査方法なのですが、検査のタイミングや運で偽陰性になることも少なからずあります。

例えばPCR検査で陰性だからと言って原因のはっきりしない肺炎を隔離病棟から一般病棟に移動して良いと思いますか?

一般的に感度の高い検査はスクリーニング検査(ふるい分け検査)に有用です。

代表例は健康診断での大腸がんのスクリーニングに用いられる便潜血(便に目の見えないレベルで血が混じっているかどうか調べる検査)などです。

便潜血が陽性であっても大腸がんはその中の100人に1人程度です。

ほとんどポリープなどの良性腫瘍ですが、検査が簡便でコストもかからないため広く用いられています。

この便潜血の検査は特異度の低い検査です。特異度については次に説明します。

特異度真陰性/偽陽性真陰性で計算されます。

特異度「検査で病気を否定できる確率」です。

この癌検査の例でいうと90%です。

例えば特異度98%のインフルエンザウイルス検査があるとします。100人の健康な人(インフルエンザに感染していない人)にこの検査を行うと98人が陰性となります。しかし、逆に言えば2人は健康なのに検査陽性になるということです。

特異度が変動する要因も様々ですが感度と同様に特異度も100%の検査はありません。

つまりコロナウイルスの検査の特異度が90%だったとすれば毎日1000人の健康な人を集めて検査をしてしまうと100人もコロナウイルス陽性となってしまいます。

本当はウイルスなんていないのですから無駄に隔離病棟に入院しなければなりません。

日本人全員を検査してみよう!

ここで実際にむやみに検査をするとどうなるか計算してみましょう。

現在発表されている新型コロナウイルスの患者数は約1000人です。でも実際は検査していないだけでもっとたくさんの感染者がいることが予想されます。

日本人の人口は1億3000万人程度ですから計算上は有病率は0.00077%になります。

かなり多く見積もって実は0.01%の日本人が新型コロナに感染しているとします。(日本に感染者が13000人いるとします。)

そしてコロナウイルスの検査が感度99%特異度99%のかなり優れた検査であるとします。

全国民を検査するとどうなるでしょうか。

感染あり 感染なし
陽性 12870 1299870 1312740
陰性 130 128687130 128687260
13000 129987000 130000000

ここで驚くべきは感染していないのに検査陽性の人=偽陽性が130万人もいることです。130万人の偽陽性の方々は元気なのに仕事を堂々と2週間休めます!やったね!!

130万人を隔離できる設備があるならこの方法で感染者を99%封じ込めることができます!

はい。無理です。

しかもこの検査は感度99%、特異度99%というスペシャルな検査です。

あのインフルエンザの検査でさえ感度90%、特異度95%と言われています。

ちなみに今の計算を感度90%、特異度95%でやると

感染あり 感染なし
陽性 11700 6499350 6511050
陰性 1300 123487650 123488950
13000 129987000 130000000

となります。

検査陽性の1000人のうち2人だけが本当の感染者です。笑

998人はただのとばっちりです。

また感染者の90%を隔離使用と思ったら650万人隔離しなければいけません。

都道府県別で言えば千葉県民が約630万人なので千葉県全体に陽性患者を押し込めて隔離すればいけます!

とまああくまで机上の空論ですがここまで見てきて疑いの少ない人に検査をやる意義の少なさが分かったと思います。

コロナウイルスの検査は健康な人がやる意味はもちろんありませんし、ただの発熱や咽頭痛、咳だけで検査をしても結局なんとも言えないのです。

やはり原因不明の肺炎の患者さんや万が一感染していたら危険な方々を優先して検査すべきでしょう。

そうすれば偽陽性の確率をぐっと下げることができます。

ここではとにかく検査することは無意味どころか逆効果であるという話をしました。
本来は感度や特異度から陽性尤度比(真陽性率/偽陽性率)を計算し、検査前確率(検査前にその病気である確率)×陽性尤度比が検査後確率(検査後nその病気である確率)となります。
この式を見ればわかる通り検査後確率を上げたければ感度特異度の高い優れた検査を施行することはもちろん、検査前確率が高い人に検査をすることが重要です。極端な話、検査前確率がほぼ0であるならどんなに優れた検査をしても検査後確率は上がりません。同様に陰性尤度比もあります。ここで話すとややこしいので割愛します。

どのように医療機関を受診すべきか

あくまで個人的見解です。ご了承ください。
もちろん症状や状態に応じて変わります。
我々医師がどのような時に検査をしたくなるか理解することが大切です。
「検査をする=心配だな」ということです。
例えば熱が出て咳や痰がでたとします。それぞれのケースを解説します。

ケース1:既往のない若年者

これは病院に行く必要はあまりありません。
その理由は肺炎や今後重症化する可能性が非常に低いからです。
むしろ医療機関に行くことが感染のリスクです。
もし病院に行くなら解熱剤など内服しても5日以上熱が続く、もしくは症状が強く、食事や飲水も十分にできない時です。風邪で5日以上熱が続くことは少し珍しいです。またただの風邪で何日も飲食できないのも少しおかしいです。
この「普通の風邪にしてはおかしいな。。」と医師に思わせるような症状があると医師に診てもらう意味が出てきます。

ケース2:持病のある若年者

基礎疾患を持っている方は話が変わります。
例えば免疫を抑える治療をしていたりすると気づかないうちに肺炎になっていたなんてこともあります。おそらくかかりつけの医師がいるはずなので早めに受診し、採血やレントゲンを受けた方が良いです。

ケース3:既往のない高齢者

高齢者は若年者に比べ症状が出づらいことに注意です。
ただそこまで具合が悪くなければ急いで病院に行く必要はありません。ケース1同様に症状が長く続いたり、悪化し続ける場合は受診してください。

ケース4:持病のある高齢者

コロナウイルスでの死亡率が高いのはこのグループです。
息苦しさや食事が摂れなくなったなどあれば早めの受診が必要です。
全体に言えることですが基本的に大事なのは基礎疾患の有無と全身状態です。
結局待てるか待てないかの違いです。
待てる間に病院に行っても待ってて(経過観察)と言われるだけです。
ただ注意しなければいけないのが一般人は「待てるのか待てないのかわからない!」ということです。
正直分からなければ病院に行くしかありません。
ですが結局行っても長く待たされたあげく解熱剤だけもらって、ついでに他の患者からウイルスをもらったのでは割に合わないので本当に医療機関に行くメリットがあるかどうか必ず考え、無駄な医療機関の受診は避けたいところです。
でも病院いかないと会社休めないよ・・
これが日本の悪いところですね。病院行くより休んで早く元気になってもらった方がよっぽど会社のためになるのに・・・
結局検査や医者に診てもらうことの意味が分からない人が「病院で検査してもらってこい!」とか「医者に診てもらってこい!」とか言うんです。世知辛いですね。。。

まとめ

検査は万能ではない。
必要な人が必要なタイミングで検査をして初めて意味があるのでむやみに検査はすべきではない。

コメント

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