時間分散(ドルコスト平均法)の話を以前させていただきました。こちら
ですが分散にはいくつも種類があります。
再度金融庁の図を借ります。
今回は地域の分散に関する考察です。
具体的には「地域の分散はリスク(標準偏差)の減少につながるか?」とう問いに答えます。
何度も話しているようにリスクの定義によってリスクは上がったり下がったりしてしまいます。
ここでは地域の分散によるリスク(標準偏差)に変化はあるのか考えます。
Contents
リスク(標準偏差)とは?
おさらいになります。
1年後におきうる自分の金融商品の金額のばらつきです。
長期投資や時間分散ではこのリスク(標準偏差)に影響を与えることはできません。
ですが地域の分散つまり投資する地域を1種類から数種類に広げることで自分のポートフォリオ全体のリスク(標準偏差)は変えることができます。
そして理論的には地域分散でリスク(標準偏差)が減ります。
地域分散でリスク(標準偏差)は下げられるか!?
簡単なシミュレーションをしてみよう!
シミュレーションはシンプルにeMAXIS Slim先進国株式インデックスとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)を比べてみたいと思います。
eMAXIS Slim先進国株式インデックスの組み入れ銘柄はこちらです(みんかぶ投信より)
一方eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の組み入れ銘柄はこちらです(みんかぶ投信より)
先進国(米国がほとんどですが)vs米国
どちらが地域が分散できているかは一目瞭然ですね。
ではリスク(標準偏差)を見てみましょう。
こちらを比較するとなんとリスク(標準偏差)は先進国全体より米国の方が少なくなっています!
あくまでこの2つの投資信託の3ヶ月、6ヶ月、1年のリスク(標準偏差)を比較しただけで今後3年、5年も同じく米国の方が全世界に比べリスク(標準偏差)が少ないとは限りません。
この結果だけを見て地域分散に効果がないということはできません。
ですがなぜこんなに分散効果が出ないのでしょうか。
地域分散には相関係数を考慮しよう!
もう一つ具体例を示します。
自分地域の分散のためにアメリカと日本の半々でいくよ!
このとき分散する国は1か国vs2か国です。
この場合コアラ君があざらし君に比べ2倍地域の分散ができていると言えるでしょうか。
ほとんどの人は感覚的におかしいと考えると思います。
分散地域が2倍というのは事実です。ですが分散の効果が2倍になるわけないのは明らかですね。
なぜそうなるのでしょうか。
それは米国株と日本株が相関しているからです。
こちらは先ほどのeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の指数相関関係を示したものです。
相関係数を簡単に言うと0が無関係で1は同じ動きをするというように表せる係数のことです。
先ほどの表では全て相関係数は0以上なので日経平均や金価格の上昇がeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の上昇に関係していると言えます。
ですが日経平均の0.92と比較して金の0.05は非常に低いため日経平均が上昇した方が金価格の上昇よりeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の上昇に関係していると言えます。
地域の分散は不要!?
とか
とか
とか言う人がいます。
実は正しいのです。
それが先ほどの相関係数で説明できます。
先ほどeMAXIS Slim米国株式(S&P500)と日経平均株価の相関係数は0.92とお伝えしました。
これはもはやほとんど連動しているといっても過言ありません。
結局連動しているのであればあえて地域を分散して購入の手間が増えたり信託報酬が上昇するくらいならS&P500に全部任せようというのも考え方としては十分許容されます。
注意すべき点としては相関係数もそうですがあくまで今までのデータで今後の相関係数を保証するものではないということ、ごくわずかな地域の分散の効果が長期的にどこまで影響を与えるか評価が難しいことです。
個人的には好みなのでどちらがいいとは言えません。
信託報酬はもちろん管理する銘柄が増えれば一般的増えますが、あくまで一般論に過ぎません。
具体例
先ほど「ごくわずかな地域の分散の効果が長期的にどこまで影響を与えるか評価が難しい」と言いました。その具体例です。
VTI(米国全体)の信託報酬は0.03%です。
VT(全世界)の信託報酬は0.08%です。
もちろん地域分散効果(リスク(標準偏差)の減少効果)はVTI<VTになります。
ですがVTIとVTのリスク(標準偏差)とリターンが今後どうなるかは予想することしかできません。
地域分散効果(リスク(標準偏差)の減少効果)が信託報酬0.05%の差を埋められるものなのかはわからないのです。
つまり「ごくわずかな地域の分散の効果が長期的にどこまで影響を与えるか評価が難しい」です。
未来は読めないので現時点ではVTIとVTどちらも正解ということになります。
地域の分散まとめ
今までの話をまとめると地域の分散はリスク(標準偏差)が理論的に減りますが、実際にリスクが減るかどうかはその時によって変わるということです。
また理論上リスク(標準偏差)を減らすためには少なからずコスト増の問題があります。
コスト増とは純粋にリターンを下げる要素なのでリスク(標準偏差)の減少に見合ったリターン減なのか評価しなければなりません。
ですがその評価は簡単にはできず(リターンの予測が困難なことが主な原因)、実際地域を分散して良かったかどうかは未来にならないとわかりませんね・・・
個人的には米国のみ、世界分散のどちらも正しいと思いますので優劣はつけられません。
個人的には世界分散の方が好みなので基本的に世界分散のインデックスも買っていきたいと思っています。
通貨の分散はリスク(標準偏差)の軽減につながるか?
ここではあなたが様々な通貨に分散投資することであなたのポートフォリオのリスク(標準偏差)を減らすことができるか考えます。
手数料やインフレは無視させてください。
通貨といっても複数の種類がありますが単純化するため円と米ドルだけを持っているとします。
アザラシ君は100万円持っています。
10年後もそれは100万円です。
コアラ君は50万円と5000ドル(1ドル100円とします)を持っています。
10年後、50万円と5000ドル(1ドル105円になりました)だったので日本円に両替し、102.5万円になりました。
外貨預金を投資として見た場合ドルコスト平均法や長期投資のようにリスク(標準偏差)に影響が出るかを調べます。
外貨預金をした場合
- 上昇:リスク(元本割れする可能性)※右肩上がりの相場に限る
- リスク(評価額の不確実性)=リスク(標準偏差)の和
- リスク(1年での最大値動き)
- リスク(標準偏差)=一年あたりの評価額のばらつき
と全てのリスクが増大しました。
当然ですね。
あざらし君は投資自体をしていない、一方コアラ君は投資をしているので少なからずリスクは発生してしまうのです。
この結果から外貨預金もしくは通貨の分散はリスクを上げるだけと言えるでしょうか。
もちろん言えません。
なぜなら通貨の分散は先ほど無視したインフレリスクを下げる目的で行われるからです。
インフレとはこちらで以前説明しました。
投資をする(=現金を減らす)のはリスク(インフレ)へのリスクヘッジになります。
例えばあなたが現金150円を持っていたとします。
もちろん投資をしていないので
- リスク(元本割れする可能性)
- リスク(評価額の不確実性)=リスク(標準偏差)の和
- リスク(1年での最大値動き)
- リスク(標準偏差)=一年あたりの評価額のばらつき
は全て0と言えます。
この時点でペットボトルのジュースが150円なのであなたはペットボトル1本の現金を保有しているのと同義です。
ですがインフレが起き、ペットボトル1本160円になってしまった場合、あなたの現金はペットボトル0.93本になってしまいます。
結局お金はモノに交換して使います。
あなたは一切の投資をしませんでしたが、お金の価値そのものが変化することによりある意味元本割れしてしまったのです。
もちろんデフレが起き、ペットボトル140円になればむしろ現金の価値が上がることになります。
どうでしょうか。
現金で投資をしていなくてもリスク(インフレ)に晒されることになるのです。
つまり現金だけを保有するのはそれはそれでリスク(インフレ)が高いということになります。
だから資産運用が必要なのですね。
まとめるとあなたの投資ポートフォリオ全体のリスク(標準偏差)には影響を与えませんがあくまで資産運用全体(現金+金融商品)のリスク(標準偏差)を下げることはリスク(インフレ)を下げることで可能ということになります。
ややこしくてすいません。
為替変動リスク
少し関連するリスクとして為替変動リスクがあります。
これは外貨建て金融商品(例えばアメリカの株)などを購入し、いざ日本円に換金しようと思ったときに為替の影響で金額がばらつくといいうものです。
アメリカのある株を100ドルで買って120ドルになったとします。20%の利益(値上がり)です。
ですが為替が1ドル100円から1ドル80円になっていたら日本円としての価値は1万円⇒9600円とむしろ損をしてしまいました。
せっかく買った株の値段が上がったのに為替のせいで利益がなくなってしまいました。
これが為替変動リスクです。
リスクなので逆に利益が上がる場合もあります。
先ほどの例で1ドル120円になっていれば14400円になり、44%の利益にアップしました。
このリスクを減少させるため為替ヘッジというものが存在します。
ですがこの為替ヘッジはおススメしません。
理由は2つです。
- 為替ヘッジに手数料がかかる。
- 円高にひたすら進むなら為替ヘッジにより損失は減るが円安になればむしろ利益アップのチャンスを捨てることになる。
1の手数料がかかればリターンが減るのはイメージが簡単ですね。
2の方ですが円高になるか円安になるかは長期間で予想ができません。なので為替ヘッジをすることで損する可能性があるのです。
ですがこれは当たり前でリスク(振れ幅)を減らすのだからリターン(上昇幅)が減るだけです。
2の方は実際メリットでもデメリットでもありません。
ですが1は明らかなデメリットなのでやはりおススメできません。
まとめ
地域の分散であなたの資産全体のリスク(標準偏差)を減らすことができます。
ですが相関係数を考慮しなければならず、相関係数の高いものばかりを組み合わせて見かけ上の地域の分散を作っても意味がありません。
また地域の分散をするために元々のリスク(標準偏差)が高い金融商品を入れ過ぎては意味がありません。
地域の分散に関して覚えておいて損がないのはこれだけです。
- 資産の分散の方が影響力が高いため地域の分散はそこまで気にする必要はありません。
- 複数の通貨を持つことはリスク(インフレ)を下げます。ですが日本で暮らす以上為替変動リスクやカントリーリスク(その国の信用がなくなり、その国の金融商品の価値が下がること)があるため多くの海外通貨を持つのは逆に危険です。
資産の分散についてはまた記事にします。お楽しみに。
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