リスクもリターンも普段いろいろな意味で使用しているため投資に関する記事やつぶやきを見たときにそのリスクやリターンが何なのかを判断するのが難しい場合があります。
まずは投資における基本的なリスクとリターンの定義とその意味について学びましょう。
できるだけ短くしたかったのですがかなり長くなってしまいました(汗)
Contents
リスクとは?
リスクとは本来「危険」という意味ですが、本来の意味で使用されていないことの方が多いです。
ここでは投資における一般的なリスクの定義とは何か考えます。
投資におけるリスクとは
投資の世界においてリスクというのは「その投資する商品の評価額のばらつき=標準偏差」です。
このリスク(標準偏差)が一般的に投資の世界で用いられるリスクです。
例として楽天証券のeMAXIS Slim先進国株式インデックスのリスク(標準偏差)を見てみると
楽天証券ではリスク(年率)という記載ですね。
またこのように定義されています。
SBI証券やみんかぶ投信であれば標準偏差(σ-シグマ)とそのまま書いてあります。
同じ投資信託でも計算日の違いによりリスク(標準偏差)が異なるためここではみんかぶ投信のデータを元に話をしていきます。
リスク(標準偏差)以外の投資におけるリスクを考えるにあたって「投資信託の目論見書補完書面」を参考にしました。
こちらはみんな大好きeMAXIS Slim先進国株式インデックスの「目論見書補完書面」です。
投資リスクといってもこれだけのものがあります。
さらに別の定義のリスクもあり、非常にわかりづらいですね・・・
とにかく投資のリスクの基本はリスク(標準偏差)です。
リターンとは?
リターンとは楽天証券においてこう定義されています。
よく年平均利回り○○%とかいう言葉を耳にしますが、このことですね。
みんかぶ投信を参考にすると
eMAXIS Slim先進国株式インデックスにおけるここ3年の平均リターンは約5%です。
この5%という数字を元に
このようなシミュレーションをしているのです。
シャープレシオとはリターン÷リスクのことです。
ざっくりいうとシャープレシオが高いほどリスクの割にリターンが良いということになります。
言い換えれば効率の良い金融商品と言えます。
リスク(標準偏差)を考慮してシミュレーションしよう!
なんと元本割れの可能性が17.8%もあります。
20年こつこつ積み上げていったのに20%弱の確率で元本割れしてしまうのです。
この結果をどう考えるでしょうか。20年後には1200万円になると思って積み上げたものが元本割れしてしまうのは衝撃だと思います。
リスク(標準偏差)を考慮するだけでかなり違った印象のシミュレーション結果になるのです。
リスク(標準偏差)は悪か?
リスク(標準偏差)を下げた方がリスク(元本割れする可能性)が下がりましたね。
もう一つの着眼点は上位10%の場合の部分です。
リスク(標準偏差)17%では2031万だったのに対し、リスク(標準偏差)12%では1795万円です。
同じリターンでもリスクの違いが成功した時の儲けの違いを生み出すのです。
これにより一概にリスク(標準偏差)が低い程いいわけではありません。
リスク(標準偏差)が低いほどより大きく儲けられる可能性も下げてしまうのです。
長期投資はリスク(標準偏差)の軽減になるか?
まぁ正直この図の意味はわからなくても良いのでまずここから先を理解しましょう!
低リスク(標準偏差)で高リターンな投資信託ないかなぁ
この商品のリスク(標準偏差)はどうかな~
リスク(標準偏差)って過去のデータがあれば計算できるんでしょ?別に自分がその投資信託持っていても持っていなくても関係ないじゃない!
あざらし君もコアラ君も10年後には平均で1431万円に資産が増えます。
リターンの場合は?
こうなっています。
3ヶ月のリターンと3年のリターンはどちらが真のリターンに近いと考えられますか?
もちろん3年のリターンですね。(マイナスのリターンを持つ金融商品に投資はしませんね。。。)
長期投資をすることでリターン(平均年利回り)を上げることができると言えるでしょうか。
もちろんNoです。
10年投資したからと言ってこの投資信託のリターンは10%になったり20%になったりするとは考えられませんよね?
10年後にリターンが10%になることはありえなくないですが、仮に10%になったとしても10年後に始めて投資をした人と10年間この投資信託を持ち続けた人とでスタートラインが変わらない以上、10年後のリターンやその先のリターンに差がないことは理解できると思います。
先ほどのシミュレーションの数字は変わりますが最終的な評価額はあざらし君とコアラ君で変わりはありません。
つまりリスク(標準偏差)同様に長い期間で評価すればより正確なリターンが推定できるようになるだけなのです。
今の世の中のリターンとリスク(標準偏差)
データ記録時間が長い(=運用が長い)程より正確なリターンとリスク(標準偏差)を図ることができます。
ですがあくまで現時点での予想であり、予想通りにならない可能性もあります。
こちらを参考にS&P500のリターンとリスク(標準偏差)を見てみましょう。
なんと150年近い歴史があります。
横軸は年数(幅は一定ではありません)です。150年の平均リターンは10%で、1ドルの投資が複利に複利を重ねて150年で488,270ドルになります。5年で計算しても150年で計算してもそこまで大きなズレはありませんね。ですがインフレなどを全く考慮していないので注意です。
リスク(標準偏差)は大体18%となっています。eMAXIS Slim先進国株式インデックスの3年でのリスク(標準偏差)は17.70%です。実は株式インデックスのリスク(標準偏差)は大体この値に収束してきます(あくまで過去のデータからですが)。
リスク(標準偏差)とリターンですが実は何年間のを参考にすれば一番今後を予測できるかはわかりません。
あくまでこの正確の意味とは永遠に長い時間長期に投資をした場合です。
例えば20年先までのリスク(標準偏差)とリターンを評価したければ100年以上前の数字を使うのは無意味かもしれないということです。
一般論としてシミュレーションに使用した明治安田生命アセットマネジメントではこのようなグラフを示しています。
海外株式は一番右上ですがやはり大体想定リターン4%強、リスク(標準偏差)が20%弱となっており、先ほどの結果と大きく矛盾しません。
何度も言いますが過去のデータから見た未来の想定です。
まとめ
再度結論を言いますが自分が何年その投資信託(金融商品)を保有してたかはリスク(標準偏差)に影響を与えません。
言い換えれば長期投資においてリスク(標準偏差)の減少効果はありません。
まぁ一言で言ってしまえばあなたが長期投資したかどうかで楽天証券HPのリスク(年率)の欄の数字が変わるわけありませんし、期待リターンの数字が変動するわけありませんね!
長期投資で減るリスク
実はリスクの定義によっては長期投資で軽減できるリスクもあります。
先ほどのシミュレーションを貼ります。この場合20年の投資です。
ですが30年積み立てたらどうでしょうか。
30年積み立てれば元本割れの可能性は少し下がります。
これを見て
と言う人もいるかもしれません。
ですがこのリスクは元本割れするリスクのことです。
当たり前ですが右肩上がり(年5%の利回り)で増加する金融商品なので長期で持つことで複利が効き、元本割れのリスクは減少するのです。
長期投資で上がるリスク
当たり前ですが1000万円の方が10年後の値動きの幅は大きいです。
だから100万円投資するより1000万円投資する方が怖いのですね。
今度は1000万円を10年運用した場合と1年運用した場合を比較します。
運用期間10年では上位30%と下位30%の差は746万円
運用期間1年では上位30%と下位30%の差は168万円
この差がリスクの差になります。
つまり10年と長期に運用した方が最終的なリスク(評価額の振れ幅=不確実性)が増えてしまうのです。
もっと簡単に言えば1年後より10年後の方が予想できないということです。
当たり前のことですね。
リスク(評価額の不確実性)は自分の想定とどれくらいかけ離れるかなので予想外に評価額が下がるさけでなく、予想外に評価額が増えるというのも含まれます。
リスク(標準偏差)はリスク許容度にどう影響を与えるか?
リスク(標準偏差)は一年あたりのその金融商品のばらつきであり、長期運用とは関係がないことを示しました。
ではこのリスク(標準偏差)はリスク許容度にどう影響を与えるのでしょうか。
リスク許容度とは自分の資産が評価額の変動で減った時に生活に支障が出ないか、精神的に不安定にならないかといった尺度で様々な要因から算出されます。
ここではあなたの投資方法がリスク許容度に果たして本当にあっているかを具体例を出して説明します。
あなたは積立NISAで月33333円を20年、楽天VTIに投資しました。
仮に楽天VTIのこの20年の平均リターンを7%、リスク(標準偏差)を17%とします。
するとシミュレーション結果は
まず一つ自分のリスク許容度を図るためにここで考えましょう。
あなたは20年コツコツ積み上げてきても8.7%の可能性で元本割れをしてしまいます。
まずこの現実に耐えられるでしょうか。(脅かすわけではありません。あくまでこのシミュレーション内の話です、)
8.7%の確率で元本割れしてしまうのは怖い!という人はこの投資方法があなたのリスク許容度を超えています。
次に仮に運用が平均的にうまくいったとして20年後に1475万円の評価額になったとします。
ここでさらに新たなリスク(1年での最大値動き)をリスク許容度を計るために考えます。
リスク(1年での最大値動き)は1年後で最大いくら損する可能性があるかです。
このリスク(1年での最大値動き)は現在の資産額とリスク(標準偏差)で求められます。
リスク(標準偏差)は金融商品が同じならば不変なため実際は自分の資産額が全てです。
では先ほどの1475万円分の楽天VTIを1年間運用し続けてみましょう。
元本割れの可能性37%もそうですが、10%の確率で20年上手く運用して増やした1475万円が202万円も減ってしまいます。
あなたはたった1年で200万円を失うことになります。
ここで怖いと思った方はリスク(1年での最大値動き)があなたのリスク許容度を超えていますので運用商品の変更が必要です。
3年でのリターンは2.86%です。
リスク(標準偏差)は4.23と株式インデックスよりだいぶ少ないですね。
ではシミュレーションしましょう。
楽天VTIのものと比較します。
元本割れの確率は0.3%と非常に低いですね。これならほとんどの方は怖いと感じないと思います。
また平均的な運用でも+33%の利益を出すことができます。
楽天VTIが平均+86%とすると物足りなく感じますが、リスク(評価額の不確実性)を嫌うのであれば債券での長期運用も十分検討に値します。
平均的に運用でき、1054万円になったとし、その後1年の運用を続けると
結構運が悪くとも数十万円の損失で済みます。
投資終了後のリスク(1年での最大値動き)が数百万は許容できないが、数十万なら許容できるという方は債券インデックスへの変更をおススメします。
当たり前の話ですがリスク(標準偏差)が大きいほど高いリスク許容度が必要ということです。
リスク許容度をイメージするためリスク(評価額の不確実性)、リスク(1年での最大値動き)についても考えました。
長期で運用することで変わるリスクまとめ
長期運用が影響を与えるリスクとしては
- 上昇:リスク(評価額の不確実性)=リスク(標準偏差)の和
- 不変:リスク(標準偏差)=一年あたりの評価額のばらつき
- リスク(1年での最大値動き)
- 減少:リスク(元本割れする可能性)※右肩上がりの相場に限る
となりました。
リスクの定義の違いで上がったり下がったりするので非常にややこしいです。
なお当然ですがリスク(元本割れする可能性)は横ばいの相場では変わりませんし、右肩下がりの相場ではリスク(元本割れの確率)は上がります。
簡単な例を言えば右肩下がりのJT株を長期で保有する方が短期で保有するよりリスク(元本割れ)が高いです。イメージしやすいと思います。
ドルコスト平均法について
この記事を書いたのはドルコスト平均法の話をするためです。
長期運用のリスクに関する知識がないと理解が難しいため先にこのような記事を作成させていただきました。
ドルコスト平均法では長期運用、時間分散によるリスク(定義がいろいろ)の減少効果が言われています。
今回考えた4つのリスクが実際ドルコスト平均法と一括投資とどちらが高く、また結果的にどうリスク許容度に影響するか考察します。
実はこの分散という言葉もいろいろな場面、いろいろな意味で使用されるややこしい単語です。
その分散が本当に分散されているか(散らばっているか)は一緒に考えていきましょう。
地域分散や資産の分散に関しても記事を書く予定です。
まとめ
正しいリスクの認識ではたして本当に今の投資で未来のリスクが許容できているかもう一度考えてみましょう!
ではドルコスト平均法の記事をお楽しみに!
コメント
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