ウイルスと細菌は明確に違うものであるためその違いを簡単に理解しよう。
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ウイルスとは?
ウイルス(ラテン語: virus)は、他生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる。生命の最小単位である細胞やその生体膜である細胞膜も持たないので、小器官がなく、自己増殖することがないので、非生物とされることもある。
感染症.comより
細胞は遺伝子を複製する機能があります。ウイルスはそれを利用して自分を増やしていきます。
ウイルスの特徴
ウイルスの細菌とは大きく違う点を3つ紹介します。
細かいことを言うとキリがないのでこの3つだけ覚えてください。
細菌より小さい
細菌は細胞でウイルスはカプセルです。
ウイルスは細胞に入るので当たり前ですが細胞より小さいです。
どれくらいかというと小さいものでは数十nmから、大きいものでは数百nmと言われています。
感染予防に使われるマスクの網目は10~100µmです。
1µm=1000nmです。
なのでシンプルに網目の大きさから言えばウイルスの大きさに対してマスクの網目は100~1000倍も大きいのです。
これを例えるとすると家の窓が1m×1mとするとその500分の1は2mm×2mmです。
家の窓の外からゴマ(2mm程度)が飛んできても防げるわけありませんね。
つまりウイルスがマスクを通過するのは窓全開にしてゴマが飛んでくるのと同じようなイメージです。
(むしろわかりづらいかもしれません!)
マスクはウイルスにとって壁にもなりませんが、例えばインフルエンザの人が咳をした時、その唾液などにウイルスが多く含まれるのですが、その唾液などの飛沫は5µm以上にもなります。
そのため感染者がマスクをする意味は大きい(他の人に移さないため)と考えられています。
もちろんウイルス感染者の唾液を直接浴びる場合、その飛沫に含まれるウイルスも自分がマスクをしていればある程度減らせます。なので感染予防にも効果があると考えられています。
突然変異が多い
ウイルスの驚異的なところはその環境に応じて変化が起きやすいことです。
ウイルスは自分の遺伝子を増やすことで増殖しますが、コピーでたまにミスが起きてしまいます。
このミスが突然変異です。
突然変異にはいくつか種類があるので簡単に紹介します。
宿主変異
以前話題になった鳥インフルエンザは鳥に感染するインフルエンザです。このウイルスは鳥から人へ感染します。ただ鳥を普段から扱う養鶏場などで働いていない限り、それほど鳥に触れる機会は普通多くないので感染はあまり広がりませんでした。
しかし、人から人へ感染できるようになるとその感染力は爆発的に増えます。
幸い鳥インフルエンザは人-人感染を起こしません。
新型コロナウイルスはコウモリやネズミから感染していると当初考えられていました。今では人から人への感染も確認されています。もしかしたら変異したのかもしれません。
毒性変異
ウイルスによる毒性が変化することです。
詳しい説明は省きますがもし今までの毒性が無くなった場合、それを生ワクチンとして利用できます。
逆に強くなる場合もあります。
今話題の新型コロナウイルスは症状も軽く、あまり危険視されていませんでした。しかし、このウイルスはその症状の軽さから多くの人に感染し、感染した人も外に出歩けるくらい症状が軽いためより広い地域で感染者を増やしていきます。
もし毒性が増えるタイプの変異が起きやすいとすると、最初は軽い症状であったのに急に致死的な肺炎や臓器へのダメージを起こすようになったりします。
そのため新型のウイルスは決して症状の軽いものでも油断できないのです。
抗原変異
インフルエンザワクチンで代表されるようにウイルス感染はワクチンがあれば予防できます。
しかしこの抗原変異により今までのワクチンが効かなくなることがあります。インフルエンザウイルスも良く抗原性が変異します。
そのため同じインフルエンザワクチンでも毎年ワクチンの中身は違います。そのため年によっては注射痛みが強かったりするのです。
薬剤感受性変異
ウイルスはワクチンが効かなくなるだけでなく、抗ウイルス薬にも耐性を獲得したりします。
HIVなどはその代表格で、そのためたかならず薬剤感受性検査を行い、複数の薬を併用して治療します。
抗生物質が効かない
抗生物質とは細菌を殺す薬です。
ウイルスを殺す(減らす、増えなくする)薬は抗ウイルス薬です。
ウイルスにはたくさん種類がありますが抗ウイルス薬があるのは一部です。
例えばヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルス、HIVには抗ウイルス薬があります。
一般的な風邪(上気道炎、腸炎)の原因ウイルスとしてはライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、ヒトメタニューモウイルスが有名です。
ここで気づくと思いますが、これら風邪の原因ウイルスには抗ウイルス薬がありません。
そのため検査して「あなたの風邪の原因はコロナウイルスです。」と言われたところで薬がないので検査しないのです。
もちろんほっといてもすぐ治るとか検査に時間とお金がかかることも検査をしない理由です。
ウイルス感染であれば抗生物質は無意味です。
むしろ抗生剤による肝障害、皮疹、下痢、出血性腸炎、耐性菌獲得のリスクなどデメリットが多いです。
抗生物質を風邪に出す場合は実質3パターンに分けられます。
1.細菌感染の可能性もある
本当にざっくりとした細菌感染とウイルス感染の見分け方として細菌感染は局所(狭い範囲)、ウイルス感染は全体的に症状を起こします。
ウイルス性の風邪は発熱、頭痛、咳、鼻水、咽頭痛、下痢、嘔気、筋肉痛、関節痛など様々な部位に症状を起こすことが多いです。
一方細菌性の場合、発熱は同じくあるとして喉だけ強く痛い(溶連菌感染による咽頭炎)、咳と痰がものすごく辛い(肺炎球菌などによる肺炎)、悪寒と発熱はあるが風邪っぽい咽頭痛、咳、鼻水などがない(大腸菌などによる尿路感染症)などがあります。
患者さんの話や他の合併症から細菌感染の可能性が高い場合、抗生物質を一応処方しておく場合があります。
2.もし細菌感染の場合に重篤になる可能性がある
話を聞く限りほぼ100%ウイルス性の風邪だと思っても病気や薬の影響で免疫が抑えられている場合や全身の状態が悪い(元々寝たきりなど)場合は細菌感染だった時に致命的になるため抗生物質を出すことがあります。
3.時間がない場合
あまり大きな声では言いませんが健康な人が病院に行って抗生物質をもらう場合はこのケースが多いと思います。
本来ゆっくり話を聞いてウイルス性か細菌性か判断したいところですが、抗生物質で風邪が治ると勘違いしている人も一定数いるため抗生物質を処方しないと「やぶ医者」と言われたりすることがあります。
本来時間があればこの記事に書いたように細菌とウイルスの違いを説明するべきなのですが、時間がない場合はとりあえず抗生物質を出す医者も多いのが現実です。
患者さんは無駄な副作用のリスクを負うことになってしまいますがウイルスは抗生物質で死なないということが一般的にならない限りこういったことは続くでしょう。
こういったことを親切に患者さんに説明してくれる医者は信用できますね。
コメント
[…] ウイルスの吐物や汚物を処理した場合はアルコール消毒が無意味なのできちんと手洗いして別の消毒をしましょう。 ちなみにウイルスと細菌の違いについてはこちらで解説しています。 […]