受け取るときに税金がかかるなら60歳まで引き出せないし、自分で運用した方がいい気がするなぁ。
iDeCoの一番のデメリットは60歳まで資金が拘束されてしまうことです。
そのためiDeCoはこちらでも説明した通り、家計に余裕があり、なおかつ収入が高い(所得税率が高い)人におススメであり、全ての人が加入するべきものではありません。
しかも受け取り時に課税されるため高所得者でもiDeCoに加入していない人はめずらしくありません。
ここでは実際にiDeCoを受け取るとき、どれくらい税金が引かれてしまうのかシミュレーションしてみたいと思います。
Contents
シミュレーションしてみよう!
全てのパターンをシミュレーションするのは困難なのでこう仮定します。
iDeCoで毎月23000円を30年間「eMAXISSlim全世界株式インデックス(日本除く」に積み立ててきた。
このコアラは地道に30年先進国株式インデックスファンドに投資し続けてきました。
資産は年利5%で増えていき、iDeCoの総額は約2000万円(計算しやすくするため)となりました。
この2000万円をどう受け取るか全く考えていなかったので考えることにしました。
受け取り方は3種類!
iDeCoの受け取り方は3種類だけです。
楽天証券HPより
ただし税金の計算方法(控除額)が年金と一時金で異なるので注意が必要です。
税金は(リンクは金融庁のHPに飛びます)
で控除されます。
それでは具体的な数字を当てはめてシミュレーションしてみましょう!
ケース① フリーランス、自営業
このコアラはフリーランスで働いていたので他に退職金がありません。また、厚生年金もないですし、国民年金基金にも加入していませんでした。
つまり年金は国民年金+iDeCoと言うわけです。
ではシミュレーションしていきます。
①全て一時金
シンプルに60歳時に全て退職金として一時金で受け取るとどうでしょうか。
その場合退職所得控除額を計算します。
金融庁HPより
30年の積立なので勤続年数は30年です。
つまり1500万円(800+70×(30-20))が控除され、500万円が課税対象となります。
金融庁HPには「退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。」とあります。
つまりの500万円は本業収入に合算されないということですね。
ここで課税所得500万円の所得税(最大税率20%)と住民税(10%)を計算すると1072500円となります。
②できるだけ税金がかからないように年金
年金受取の場合は金融庁HPによると「公的年金に係る雑所得の速算表」を参考に控除が発生します。
金融庁HPより
(令和2年から年金以外の収入に応じて控除額が変わりました。)
この場合この60歳のコアラが現役で1000万以上稼いでいるかいないかで計算がかわりますね。
ここではなるべく一般的な話になるように「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下」つまりコアラは60歳で仕事を辞めるもしくはかなり仕事量を減らす場合を想定して一番上の表を用いて計算します。
また、65歳で仕事はやめることとします。
そして受け取る期間と回数ですが楽天証券のiDeCoに加入していたと考えます。(証券会社によって若干異なります)
楽天証券HPより
年間支給回数は年1回から12回まで選べますが1回受け取る毎に数百円の手数料が取られるため年1回受け取りを基本とします。
受け取り期間は先ほどの表に則ると年金収入は65歳未満は年間60万以内、65歳以上なら年間110万円までは課税されません。(実際にはさらに基礎控除もこの計算に加えます)
一方国民年金は現在年間779300円になっています。計算しやすくするため80万円で計算します。
計算すると20年以内で最も税金を払わないようにするには
65歳になってから20年かけて年金として受け取る
のが最も税金上お得です。
その場合年金収入はiDeCo100万円(2000万÷20年)+国民年金80万=180万円となります。
この場合の課税所得は公的年金控除(100万×0.75-27.5万=47.5万)と基礎控除(38万)を引いて69.5万円となるので所得税と住民税合わせて15%で計算すると年間10.5万円の税金になります。
これが20年続くので合計210万円ですね。
一時金だけより100万以上払う税金が高くなってしまいました。
③一時金と年金を組み合わせて最小年数で最も税金がかからないようにする
組み合わせでもっとうまいこと節税できないでしょうか。
計算してみます。
一時金
一時金は先ほどの計算で1500万円まで課税されないのでまず一時金として1500万円受け取ります。
年金
年60万円ずつ年金として受け取ると9年かかって全て受け取れます。
その間の税金は60-65歳時は国民年金を受け取っていないので課税されませんし、65歳以降は国民年金と合わせても年間140万円となり、公的年金等控除、基礎控除(合計148万円)により税金がかかりません。
途中で支給額を変更できればもっと効率よく受け取れるのですが、支給開始されてから年金の額や期間の変更は原則できないようです。SBI証券より。
まとめると
一時金で1500万円受け取り、のこりは年60万円(年1回受け取り)で9年間受け取る
こうすればこのケースの場合税金がかからずにiDeCoを受け取ることができます。
厚生年金や国民年金基金、退職金が全くないケースでこれだけパターンがあります。
まだこのケースの場合でも付加年金の有無や年金受給年齢でも変わってきます。
ケース② 退職金や厚生年金があるケース
しっかりとした退職金と厚生年金がある場合を考えます。
- 退職金は65歳で1500万円(勤労期間は35-65歳の30年)
- 厚生年金は年200万(大体男性の平均受給額くらい)
ここでの受け取り方は様々なパターンがあるので一番かかる税金が少ないものだけ紹介します。
ここで大事なポイントは
退職金の5年ルール=“過去4年以内に「他の退職金」がある場合は、退職所得控除の計算に一定の調整が入る”
こちらより引用
先にiDeCoを受け取り、後から退職金を受け取る場合、iDeCoと退職金の受取期間を5年間空ければ、それぞれの受け取り時に退職所得控除をフルに使うことができます。
これが圧倒的に強い節税効果があります。
つまり年表でこのコアラのケースをまとめると。
60歳:iDeCo一時金を1500万円受け取る(税金0円)
iDeCo年金を年100万で5年間受け取る(60-65歳時まで税3000円/年)
65歳:退職金を1500万円受け取る(税金0円)
国民年金80万、厚生年金200万円を受け取る(税25.5万円/年)
解説します。
退職金の5年ルールに則り、iDeCoを先に受け取り、尚且つ5年後以降に退職金を手に入れられれば退職所得控除をMAXまで活用できます。
ケース①同様に60歳の時に大部分のiDeCoを課税なしで手元に持っていきます
その残りは年金として分割で持ってくるのですが、65歳時から年金受給が始まり、どうやっても税金が発生します。
そのため税金の総額をできるだけ下げるためには65歳までに全て受け取ってしまうのが良いです。その場合年間3000円程所得税や住民税がかかりますが仕方ありませんね。
iDeCoの出口戦略に関係する要素
- iDeCoの運用額、運用年数
- 企業型DC・iDeCoの運用額、運用年数
- 退職金の有無と額と受け取れる年齢、運用額
- 60歳以降の年収
- 厚生年金加入の有無と額
- 国民年金基金加入の有無と額
- 年金型保険への加入の有無と額
- iDeCoに加入している証券口座の手数料
さらに言えば60歳時に自分の投資している投資信託が大暴落を起こしていれば一時金で一気に回収するより年金として受け取った方が税金は高くなりますが受け取れる金額が増えるかもしれません。
このように本当にいろいろな数字を考慮しないとその人にとってのベストな方法は見つかりません。
さらに20年もすれば税制も変化していることでしょう。(令和2年には公的年金に対する控除額が減り実質この分野で増税されました。)
iDeCoは税金の先延ばし?
iDeCoは税金の先延ばしであるという話があります。
- 所得税率33%(年収1300-2200万円程度):約360万円
- 所得税率23%(年収1100-1300万円程度):約280万円
- 所得税率20%(年収650-1100万円程度):約250万円
- 所得税率10%(年収450-650万円程度):約170万円
- 所得税率5%(年収450万以下):120万円
まとめ
iDeCoの出口戦略は非常に計算が煩雑だということがわかりました。
もし節税を最優先にした無難な方法を一つ挙げるとするなら
退職所得控除限界まで一時金で受け取り、その後はできるだけ長い年数で年1回年金として受け取る
ですかね。
個人差が大きすぎてなんとも言えません!笑
難しくなってしまいましたがiDeCo加入前にこの記事を何度も見てじっくり判断してください!
おまけ
このケース①とケース②を比べるとどれだけ厚生年金や退職金が大きいものかわかりますね。
退職金1500万に厚生年金があれば80までは余裕で手取り30万で生活できます。しかもiDeCoや企業型DCもあれば盤石ですね。
逆に自営業・フリーランスはiDeCoで60歳時に2000万円手に入れても老後は国民年金だけではかなり厳しいです。
それだけフリーランスというのは自分で資産運用が重要ということですね!
しっかり資産運用してきましょう!
コメント
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